昭和の話 1
私が小学生だった昭和50年代のこと
川で溺れたことがある
溺れかけた ではなく、しっかり溺れて意識不明で河原に引き上げられた
しかし、怖かったとか、もう死ねかもしれないなどとは思っていなかった
そこは、夏休みになると毎日のように泳ぎに行っていた近所の川
その日は、姉と後2人の女の子達と一緒に遊んでいていつもは行かない川の向こう岸まで行った
そして、行きはみんなで一緒に行ったのに、帰りは1人ずつ戻ることになった
そこで、戻ろうとしたところで、深みに足がはまって溺れそうになった
そばには少し歳上の小学生の女の子が1人
手を伸ばしてくれたが、一瞬捕まるとその子の方が引っ張られそうになり、手を振り払われた
引き上げてもらうのは難しい しかもその子の方がわずかだが、上流方向
足が取られた状態からそっちへ向かって泳ぐほどの泳力はその時の私にはなかった
(その後も、今もずっとない)その時ジタバタしながら、はっとひらめいた
夏休み毎日のように遊びに来ていた川 溺れた側に来ることは今までなかったが、対岸から見ていた景色は覚えている
もう少し下流に行けば、浅いところがあったはず
そこまで、流れていって、立ちあがろう
上向きの姿勢で浮いて流れて行こう
身体の力を抜いて浮いて…
頭の中ではその後、浅瀬ですくっと立ち上がる自分を想像しながら…
しかし、気がつけば河原で寝転がった状態で、ゲホっと水を吐いて気がついた
その後のことは、あまり覚えていない
が、救急車が来ていたわけでもなく、両親や近くの大人が駆けつけていたわけでもなく、そのまま子供だけで歩いて家に帰ったと思う
その日の夜、母から一緒にいた姉は私がふざけていると思って対岸から見ていたら、近所の男の子が溺れていると言って助けてくれたと説明を受けただけ
特に大事になることもなく、川で遊ぶことへの恐怖心も芽生えず
翌日も川へ出かけていた
対岸にさえ行かなければ、危ない目には合わないのだ
親も子供も逞しかった、昭和の頃の話し